本当は
咲桜ちゃんの事は言いたくなかった。




"医者"として。
俺は咲桜ちゃんの個人情報を
守る立場だ。
他者に洩らすのは
絶対にしてはいけない事。


そして"俺自身"として。
咲桜ちゃんを守りたい。
巻き込みたくなかったから。




しかしこうなった場合
隠す方が難しいよな。

現実
付き合ってもいない男女が
一緒に暮らしているんだから…。


柚花じゃなくても
気になるか…。


とは言え
全部話す訳にはいかない。
だからと言って
嘘を話した所で
通用しそうもないしな…



仕方ない。
大まかな説明だけするか。



「姫宮さんは、俺の…患者だ」


「えッ…?」


「訳あって入院が出来ないから、俺の家で治療させているんだ」


「ウソよッ!」


「本当だ」



間違ってないし
嘘でもない。



「それならどうして彼女だけ!?なぜ翔灯の家なの!?」


「それは…」



『咲桜ちゃんを独りにしたくなかった』


…とは、言えなかった。

医者としては
理由が不純すぎる。



「患者って…医者が個人的にそんな事していいの?病院にバレたらッ」


「わかっている」



十分すぎるくらい
理解しているさ。