テーブルの上には刺身の盛り合わせ、枝豆、から揚げやポテトフライと言った居酒屋定番のメニューが出揃っている。


メンバーはそれぞれビールを飲んでおり、柏木さんのジョッキの中はあまり減っていなかった。


「柏木さん、もしかしてお酒苦手?」


俺は聞いてみた。


弱いのにこんな場所を選んでしまったことの申し訳なさと、早いうちに酔わせてしまえ、と言う悪い俺が同居して複雑な気持ちになった。


「いえ、好きです。ただ、部長がいらしてないのに部下である私が先に頂くのはどうかと思われたので」


「え?そうなの」


柏木さん……


普段は氷点下のごとく冷たいけど、ホントは優しい人なんだね。


じ~ん、と感動して俺はテーブルを見渡した。


他のメンバーの酒はだいぶ減っている。


こいつら~~俺の登場を待たずに勝手に飲みやがって。


「部長は何されます?」


さりげなくメニュー表をとって手渡しくれる辺り、気が利いてる。


……と言うより慣れてる?


柏木さんは誰かとこういう場所に来たりするのだろうか。


チクリ


胸の中で何かが痛みを発した。


何だろう、この痛みは……


初めて感じる痛覚に俺は首を振った。




「とりあえず生で」


俺はそれだけ言うと、店員を呼んだ。