顔の傷が治った。


俺の携帯のメモリから女の名前が消えた。(ちなみに綾子は男友達のフォルダに入っている)


これで堂々と柏木さんに番号を聞ける!


とは思ったものの、どうやって聞こう…


昼休みは俺と柏木さん交代で取ってるし、彼女がタバコやトイレに立つときに後を尾けていくのもちょっとストーカーっぽい。


俺は今も真剣にパソコンに向かっている柏木さんをちらりと盗み見た。


『麻野さん、毎日メールを送ってきて…もちろん社内メールですけど』


前に柏木さんが裕二に対して迷惑そうに言っていた言葉をふっと思い出す。


そうか……


その手があったか!


俺はマウスに手を伸ばすと、カチカチっとアウトルックを開いた。





宛先:柏木 瑠華

件名:携帯ナンバーとアドレスにつきまして



お疲れ様、神流です(>_<)

仕事中なのに、突然のメールごめんなさい。

柏木さんの私用携帯のナンバーとアドレスを知りたくてメールしました。

迷惑じゃなければ、教えてください。



神流 啓人






メール内容を入力して“送信”ボタンをクリックする。


すぐに気付くかな?


ドキドキした面持ちで俺は柏木さんの横顔をそっと窺った。


柏木さんはいつもと変わらず、真面目な表情を崩さずにキーボードを操っていたが、ふっと目を開いた。


そしてちらりと俺を見る。


怪訝そうな顔つきで俺を見ていたけど、またすぐに画面に向き直った。



へ、返信してくれるかな……


不安な面持ちで、俺もパソコンのデスクトップに向き直った。