闇のプリンス ~オオカミと死の女神~《休載中》


「ヴァンパイアがいなければ争いは起きない。普通の生活が出来る。怯えなくていいんだ 」


「怯えてなんてないよ 」


私は必死に首を振った。


ルキアは、クリスティン家は怖くない。


「怖くない? 」


「怖くないよ 」


「永遠にそうだと思う? 」


「………っ 」


言葉が出ない。


“もちろん”という単語が、すぐに出ない。


「樹里が大人になっても、あいつは17歳のまま。樹里がおばあさんになっても、あいつは今のままなんだよ 」


「……やめて 」


「あいつとは恋人ごっこは出来ても家庭は持てないし 」


「やめて 」


「いつ血の欲求に惑わされるか分からないし 」


「…… 」



「何よりあいつは死人…… 」


「もういいよ! 」


思わず声を荒げて耳を押さえる。


聞きたくない。


そんな事、考えたくもない。


「怖くないんじゃなかったの? 」


「……意地悪 」


そう言うダークを、少し睨むように見た。


「本当のことを言っただけだよ。樹里は人間なんだ。危険過ぎる 」