どんなに新品な硬貨でも、錆びた硬貨でも、お金の値段は買わないと思うんだけど。
疑問に疑問を上塗りする俺をチラッと見やった彼女は、
「ケイさんとの…思い出ですから」
これを見ると思い出すと言いますか…、お守り、と言いますか…、ココロがボソボソ暴露。
真情を聞いた俺はというと目が点。
え、ナニ?
俺との思い出って150円程度?
ペットボトル一本分価値しかねぇの?
そりゃやっすいんだぜ!
せめて千円程度が好ましいっ…じゃなくって、俺=150円の思い出ってなんじゃらほい?
俺とココロの間に150円エピソードってなんかあったっけ?
腕を組んで思い出のページを開いてみるけど、高速で捲ってもみるけど、申し訳ないことに全然思い当たる節が見当たらない。
眉間に皺を寄せて考え込む俺は観念し、是非とも150円エピソードを聞かせて欲しいと、彼女に頼むことにした。
そしたらココロ、内緒だっておどけ口調で微笑。でも一つ教えてくれた事がある。
それはあの隔離されていた百円玉と五十円玉は俺が彼女に渡したものらしい。
……待て待てまて、そんなエピソード、ちっとも憶えがっ。
焦る俺を余所にココロはあどけない笑顔で語り部に立つ。
「私にとってあの150円は思い出そのものなんです。だから大事に取っておこうって。アレを見ると、当時のこと思い出しちゃって」
微笑ましそうに語るココロだけど、ちょっと俺は複雑だぞ。
だってその150円を見る度に俺を思い出してくれるのは嬉しい、嬉しいけど、150円を見て俺を思い出すって。
当時の俺、何をココロにしたか分からないけど、150円は安いぞ。千円くらい渡せって。
おかげで未来の俺は150円という値段に重ねられて複雑な気持ちを抱く羽目になっちまったじゃないか。
田山の思い出のお値段150円。安っ。



