「う゛ー」
彼女には唸られるし。
……ちょ、なんで唸られるんだ?
俺はココロに視線を流す。
ココロはぶぅっと脹れて唇を尖らせていた。
それでもってボソボソボソ。
何を言ってるのか、ゼンッゼン聞こえないんだけど。
「ごめん。ワンモア」
俺は彼女に頼んだ後、グッと耳を澄ませる。
ココロは唸り声を上げた後、俺のシャツの裾を握り締めて、「可愛かったですもんね」むぅっと眉根を寄せる。
…はい? 可愛かった?
「テレビに…出るだけありますもの。私だって…分かってますもん。でも…ときめきは、ちょっと…ちょっと…」
むむむっと不貞腐れている彼女は握り締めていたシャツの裾をクイクイッと引っ張ってくる。
えーっと、ココロが不貞腐れてるのって…、俺がときめいた発言を耳にしちまったからで。
んでもってテレビに出て…、あ、分かった。
ココロ、さっき観た映画のヒロインさんに俺が「ときめいた」とか言ったと思ってるんだろ!
ち、ちっげぇ…、全然ちっげぇ。
確かにヒロインさんは可愛かった。
テレビに出るだけあって可愛かった。
が、しかし俺はときめいてはいないぞ。可愛いとは思うけれど、ときめきの相手は一人しかいないわけだ。うん。
「んーっと。ココロ、俺、ときめきの対象…映画のことじゃないんだけど」
ぶーっと脹れたままのココロが、じゃあなんだとばかりに恨めし気な眼を飛ばしてくる。
あああっ、訂正しないといけないのは分かってる。分かってるけどっ、口にするの、メッチャハズイぞ!
消えてしまいたいくらいハズイんだけどっ。
なーんでこの発言、拾っちまったかなぁ、ココロ! 元凶は俺なんだけどさ!



