「ココロ…ばかだな…。ケイに同情…」
ぱくりとあんぱんを頬張るシズさんに、「るっさい!」響子さんは空になった煙草の箱を投げ付けた。
反射神経の良いシズさんは頭を下げてひょいと空き箱を避ける。
忌々しいとばかりに地団太を踏む響子さんは鼻を鳴らして相手を睨んだ。
「あんたも勘違いしただろうが!
それにケイには、ちゃ…ちゃんと後で謝っとくって言ってるだろ? 缶ジュース付けてな」
「もう少し…冷静になるべきだな。
お前…、ココロのことになると、馬鹿になりがち。周りが見えなくなる…ふぁ~…、リーダーと同類」
「それはショックだ、心外だ!」
響子さんは大反論した。
あの…シズさんも響子さんもリーダーさんにとっても失礼な事を言ってます。
ヨウさん、酷い言われよう。可哀想に。
と、とか思ってる場合じゃなくて!
ま、不味いですっ…響子さん(とシズさん)が変な勘違いをしてケイさんに電話したものだからっ、きっと今頃ケイさんっ、パニックになってる!
あああっ、それどころかッ!
もしも…け、ケイさんにっ、そういう風なことをしたいんじゃないかと勘違いされたらっ、私、一生顔向けできない!
……そりゃキスとかはしたいと思うけど、その先のアダルトな世界はまだ私には早いし。
スることだって想像も付かないといいますか何といいますかっ、ケイさんにすぐ連絡を入れて誤解を解かな「プルルルッ」
うわっ、で、で、電話っ!
机上に置いていた携帯電話から有り触れた着信音が声を上げた。
マナーモードにしていなかったものだから、空き教室に着信の音が満たされた。
私は急いで携帯を手に取る。
薄々分かってはいたけど、ディスプレイに表記されている名前を見てやっぱりそうだとテンパった。



