……私だったら、不良さんにフルボッコされた日から家に引き篭もって、一日たりとも外に出ないと思います。 

それでもってウジウジオドオドエンエン…、落ち込んで嘆いて泣いて卑屈を零してエンドレス。


私、ケイさんみたいになりたいなぁって思うんです。


それにですね、響子さん。
 

ケイさんって初対面から凄いと思ってたんですよ。

なんでかって言ったら、彼は系統が違う不良さんと当たり前のように自然に打ち解けているんですから!

恥ずかしながら私は不良というだけで、皆さんに怖じを抱いていました。

なのにケイさん、初対面の不良さん達とも打ち解けて…、それだけじゃなく、舎兄を自転車の後ろに乗せてハジメさんと弥生ちゃんを助けに行く。


それってすっごくカッコイイと思います。


あ、そういえば、ケイさんって響子さんの言ったとおり、負けず嫌いな性格なんですね。

喧嘩なんて自分からしなさそうなタイプなのに、五木さんとはあんなにも激しい喧嘩を繰り広げるなんて。


「ケイさん、普段接する時は面白い方ですから驚いちゃいました。男の子同士だとああいう喧嘩も―…、響子さん、どうして笑うんですか?」


正面に座っている響子さんにクスクス笑われて、話題の腰を折られた気分。私、真剣に話していたのに。

ぶーっと脹れる私に対し、「悪い悪い」響子さんは頬杖をついて目尻を下げた。


「いやな、ケイのこと。スッゲー見てるなって思ってな」


ドキリ、指摘すると急に羞恥心が芽生えた。

私はしどろもどろになりながら、ストローでクルクルとグラスの中身を掻き回す。


中身が半分以上無くなっていたもんだから、カランカランと溶けかけの氷がグラスの中でひしめき合っていた。


「だ…、だって系統的に似てるんですもの。親近感が湧くと言いますか。何と言いますか」

 
そう、ケイさんには親近感を抱いている。同じ系統、同じ日陰っ子だからこそ親近感を抱いてるんだ。

でも…、ほんとに親近感だけ? って聞かれたら…、うーんっと、うーんっと…、強過ぎる憧れも抱いてるって…、薄情するけど。