えええっ、そこでいきなりの罵声ってっ?!
向こうから聞こえるケイさんも『はいぃぃ?』初っ端からなんですか、と響子さんに言葉を返している。
でも響子さん、こめかみに青筋を立てて、ギャンギャン喚き始めた。
「くぉおおらっ! ケイっ!
あんたっ、万が一そういうことになったら分かってンだろうな! ココロ泣かせやがたらっ、末代まで祟るぞ!」
え゛?
どうしてケイさんが責められ…あ、ま、まさか響子さん、勘違いしてるんじゃ…、わ、私が気恥ずかしくてとある単語を小さく小さく言ったものだからっ!
だ、だったら早く止めないとっ!
そ、そうだよね、もしとある単語が聞き取れなかったら、それはつまり『する』わけで…不良さんの皆さんは大人なわけで…勘違いされッ、
ち、違う~~~!
響子さん、そういう意味じゃっ!
「あ、あの!」
「はあ? 意味が分からない、だと?
だーかーらー、今度の土曜っ、うちの大事な妹分とスるんだろうが!
例え合意の上でもなっ、そういう不埒な好意は安易にッ……。
……。
ナニ?
デートの約束? 映画?
……はあ? あんたっ、ココロを抱く『はぁああああ?! ちょ、俺にどういう疑いが掛かってるんですか! 一から十まで俺に説明して下さいよ! 何がどーなって俺等、そういうことになってるんですか?!』
……は、ははっ。
だ、抱くわけねぇよな。わ、悪い悪い。うち等の早とちりだったみてぇだ。
そうだよな、あんた等とうち等じゃ違うよな。
ピュアの違い? 価値観の違いってヤツ? ははっ…あー…悪いケイ。マジ、後で謝るから。じゃあな」
『あ、ちょっと響子さ―…』
素早く電源ボタンを押して携帯を仕舞う響子さんはコッホンと咳払い。
そして私に向かってニッコリ、
「デートの部分を端折るのはヨクナイぜ」
って注意してきた。
は、端折ってたわけじゃ…、デートって単語が恥ずかしくて小さく言っちゃっただけで…、わ、私に責任はないと思うんだけど。
勘違いさせた責任…あるかもしれないけど。
うーん…、と、とりあえず…恥ずかしい。
余所でシズさんが大いに呆れていた。
ヤレヤレと肩を竦めて、あんぱんの封を開ける。



