「はいこれ」


俺の奢りだから、パンフレットを差し出してくるケイさんに瞠目したけど、有無言わせず笑顔で渡してきたから…、笑顔で受け取った。


正直に言うと、真正面から彼の笑顔を見るのも結構緊張するし、ドキドキする。


だって好きな人の笑顔だから、ドキドキしても仕方が無いよね。

ちょっと欲を言えば、この笑顔、独り占めにしておきたいと思ったり思わなかったり。



うう…っ、浅ましいかもしれないけれど、これも仕方が無いよね。



彼のこと、好きなんだから。



スーッと辺りが暗くなる。


「そろそろCMに入るな」


ケイさんは小さく天井を仰いだ後、物音を立てないように座席に腰掛ける。

「楽しみだな」

ケイさんの言葉に、一つうんっと頷く。これから観る映画、凄く楽しみ。

でも楽しみなのは映画の内容じゃなくて、こうしてケイさんと映画を観ることだったり…ね。


私はCMに彩られる巨大スクリーンを見つめる振りをして、彼の横顔を盗み見る。


するとどうだろう、ぶわっと記憶が蘇ってきた。


ケイさんが私達の前にひょっこり顔を出した日、舎弟として紹介された日、それから彼が舎弟として努力していた日々。



私は彼が舎弟になってから、ずっとずっと彼のことを陰から見守ってきた。




(きっと私の方が早く、ケイさんのことを好きになった。それは私の自慢ですよ、ケイさん―――)




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