「あんたって不思議なヤツだな。名前の通り、心優しいっつーか。人の心を和ませるっつーか」


そう言ってきてくれる響子さんだけど、全力で否定させてもらう。

だってそんなに凄い性格の持ち主でもないし、寧ろうじ虫だし。
ウジウジばっかりのオロオロばっかりの、オドオド女だし。


「私、そんな大それたヤツじゃありませんし、名前…嫌いです。根暗ですし…。私…、根っこから暗いんですよ」

「ははっ、なーるほど。そうやって卑屈になるところが根暗、か。可愛いじゃねえか、アンタ。姉御心が擽られるっていうの? アンタ、うちと結構馬が合う」 


アンタみたいなのと喋ってると世話を焼きたくなるし。
 
かいぐりかいぐり頭を撫でてくる響子さんは煙草の件では世話にもなったしな、と目尻を下げて微笑。


「いつでも此処に来いよ」


アンタの気が向いたら、一緒に昼食を取ろうと声を掛けて来てくれた。

同じ浮いてる者同士仲良くしよう、なんて補足を付け足して。


呆けていた私だけど、これはもしかしてお友達になったってことかな…、状況と意味を理解して、

「いいんですか?」

軽く期待を寄せて響子さんを見つめる。

何処かでやっぱり私は誰かと一緒にご飯を食べたかったみたい。

相手は不良だけれど、彼女の明るさに惹かれて自ずから不良に歩み寄ってしまう。


それだけ人肌恋しかったのかも。
 

勿論だと頷く響子さんは明日も此処にいるからと、気さくに言葉を紡いだ。

最初こそ嘘なんじゃないか、根暗をからかってるんじゃないかって疑心を抱いた卑屈な私だけど、彼女の真摯な笑顔に思わず首を縦に振ってしまう。


これが私と三ヶ森響子さんの出逢い。


私にとって本当の意味で、初めてのお友達が出来た瞬間だった。
 

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