俺の言葉にココロは呆気に取られていたけど、照れ照れはにかんで俺にこう返した。
 

「ケイさんも雰囲気違いますね。カッコイイですよ」


この子は良い子にもストレートに物を言ってからにくさ…、あーくそっ、俺の方がタジタジだっつーの。
 
ぶっきら棒にありがとうって返す俺は、チャリを百円駐輪場に置くために鍵を解除。ココロと一緒に百円駐輪場に向かった。

「やっぱりケイさんは自転車ですよね」

なーんて言ってくるココロに、

「でもこっからは徒歩だよ」

敢えて言うなら電車を使うかな、彼女に返して一笑。肩を並べて駅に続く階段を上った。
  
切符売り場で切符を買った後、改札口を通って俺達はホームに立つ。
 

俺はチラッと彼女を流し目。


微風に揺れるワンピースがやけに色鮮やかで綺麗に見えたのは、俺の目の錯覚だろうか?

カレカノになって初めてのおデートだから、結構俺緊張してるのかもしれない。弾まない会話は次第次第に沈黙に姿を変えていく。お互いに緊張している、からかな。

だけど不意にココロが言う。「夢みたいです」って。
 

「いつか、こうやって男の子と遊びに行けたらなぁって思っていました。女の子って結構、恋愛に憧れるものですから…、私も柄になく…。凄く嬉しいです」

 
―――…。
 
軽くココロは過去を振り返っている、そうに違いない。

だから俺は言うんだ。
ホームにやって来る電車の騒音に負けないくらい、ちょい大きな声で。
 

「夢、俺で叶えられるなら本望…かな」


ブワッと吹く風に過ぎ去る通過電車。けたたましい騒音に、ホームから垣間見える小さな青空。



全部が俺にとってのワンシーン。



真っ白な花柄ワンピースを靡かせる彼女は、俺の言葉を聞き取って頬を桜色に染めた。


「これもケイさんが私を好きになってくれたおかげですよ。
私ですね、自分の名前すら嫌いでウジウジする女だったんです。

でも今なら、自分のこともケイさんのことも好きって言えます」
 
 
真っ直ぐすぎる瞳を受け止められず、俺は視線を青空に向けて逃げた。

照れ隠しているんだって、彼女にはモロバレだった。


⇒№01