◇ ◇ ◇



「ありえねぇえええ! なんでうちの可愛い妹分が失恋オーラを醸し出してやがるんだよ! ケイもっ、いかにもこの恋を諦めていますモードにっ……、リーダー。これは由々しき問題じゃねえか?

速やかに解決するべき問題だと思う。
ああ、思うね! うちはココロの恋を成就させてぇんだよ!

アンタだってケイの舎兄ならそう思うだろ? な?!」


スーパー付近倉庫裏のたむろ場にて。 

響子に迫られた俺は、「ちけぇよ!」ちょっと離れろと身を乗り出しているキャツに物申した。

興奮している響子は俺の話なんざちーっとも聞いてくれねぇ。


胸倉を掴んで、「なんであいつ等は失恋モード醸し出してるんだよ!」発狂しながらぐわんぐわん体を揺すってくる。
 

弥生が落ち着いてと制してくれなかったら、俺は暫くの間、響子に揺すりの刑を受けていたことだろう。


ゼェハァ息をつく俺にモトが大丈夫ですかと狼狽する一方、響子はなんでこうなっちまったんだと腕を組んでガックシ項垂れた。


頭上に雨雲を作り、どーんと落ち込んでやがる。

それはそれは手前のことのように。
 

今、現在進行形で集会が開かれている。

響子が半ば脅しで開いた集会なんだが(出席しねぇ野郎は女にするとか言いやがった)、地味組だけはこの場にいない。


なんでかって言うと響子が適当な理由をつけて二人を出払わせたからだ。


なにぶん響子が議題に挙げているのは【地味組の片恋】だしな。

当事者同士がいたらやりにくいんだろう。
 

先日の話になるが、ケイとココロは互いが互いに恋心を抱くようになった。

響子はココロの、俺はケイの気持ちに察したもんだから、告白すりゃあいいじゃないかと背中を押してみたものの、どうしたことかケイの奴、「ココロには好きな奴がいるから」とハナっから諦めモードに入っちまって。


ココロも同じ理由らしく、傍から見りゃ両思い同然なのにやきもきした関係を築き上げている。