「どうした、ココロ。顔が笑ってるけど」



チラチラッと後ろを一瞥してくるケイさんに、私は笑みを深めた。

今の私を好きでいられるのは響子さんや弥生ちゃんを筆頭とする素敵なお友達と、私を好きと言ってくれた彼のおかげ。


私は今の私が大好きだ。


これからどんなにネガティブになって卑屈になろうとも、最後はちゃんと自分を好きだと言える自信がある。



ああ、そうだ。

この話をケイさんにしてみよう。


自分が好きでいられるようになったと彼に話してみよう。


きっとケイさんなら笑って良かったと言ってくれるに違いない。


そしてカッコつけの調子ノリさんはきっと、私を好きと言ってくれるんだろうなぁ。


私はその気持ちに返すんだ。

私も好きですよって。


ちょっと先の会話を想像しながら、私は自転車を漕いでいるケイさんに話を切り出した。



「今の自分が好きでいられるようになったなぁって思ったんです。私、今の自分が好きになれたんですよ。ケイさん」



彼の笑声を乗せた真っ向から吹いてくる風が、とても気持ちが良い。


微睡む日溜まりの中に誰かの優しさを感じたけれど、それは一体誰のものだったんだろう?


もしかしたら私のお父さん、お母さんのものなのかもしれない。


自転車に乗った私達の姿を見守ってくれているなら、私は彼等にこう気持ちを伝えるんだ。

 
今日もケイさんを好きにいる私がいます。

明日はもっとケイさんを好きになっている私がいるでしょう。



この恋の魔法が明日もあさっても、どうか続きますように。 



End.