ケイさんのせいで、小っ恥ずかしい思いをしたことはさておき(とっても恥ずかしかった!)、私は彼の家で夕飯をご馳走になった。

彼のお母さんが私を誘ってくれたんだ。

折角の厚意だし、ケイさんも迷惑じゃなかったら食べて行って欲しいと微笑んでくれたから、私は彼の家でご飯を頂いた。


彼の家族と一緒にご飯を食べたんだけど、それはそれは賑やかな家族で、浩介くんの懐きっぷりやお母さんのお喋り好き。


ご飯の途中で帰宅してきた彼のお父さんのマイペースっぷりにも笑ってしまった。

だってケイさんのお父さん、私がいるにも関わらず、いそいそと居間で着替えようとしたんだもの。

これにはさすがのケイさんやケイさんのお母さんも全力ストップを掛けていた。


「とーさん! か、彼女の前で着替えないでくれよ! ヨウ達が泊まっているわけじゃないんだからさ! モラルを大切にしてくれー!」

「お父さん、女の子の前でそれは許しませんよ! 寝室で着替えてらっしゃい!」


「田山家ルール。父さんがルール「圭太の彼女の前で着替えることは、母さんが許しません!」
 

こうして非難を浴びたケイさんのお父さんは、渋々寝室に足を伸ばしていた。

「まったく」

花盛りの乙女の前で、ケイさんのお母さんは鼻を鳴らしていたし、

「ごめん」

俺の父さん、ちょっと不思議ちゃんが入っているんだとケイさんは詫びを口にしてきた。

確かに着替えは気にするけれど、ケイさんのお父さんは面白いって分かったから私は笑って気にしていないと流すことにした。


とにもかくにもケイさんの調子ノリがどう培われたか分かる、家族光景。

アットホームでヨウさんやシズさんがお気に召すのも納得する。
 

夕飯後、私はデザートの苺を頂いてお暇することにした。

わざわざお母さんが買ってきてくれたみたい。

デザートに出してくれだけじゃなく、苺を手土産としてくれた。至れり尽くせりだと思う。


もう日も落ちたからと、ケイさんが自転車を出してくれた。

私の家まで送ってくれると言ってくれる彼に最初こそ遠慮したけど、


「遠足は帰るまでが遠足」


ならデートも帰るまでがデートだろ?

意味深な台詞を向けられて、私は厚意に甘えた。

ケイさん、送ってくれることを口実に私と過ごす時間を作ってくれようとしているんだ。甘えるしかないと思う。