途端にココロは熟れた林檎のように真っ赤っかになって、「ケイさんのバカー!」と両拳で叩いてきた。


アイテッ、アイテッ!


なんでっ、本当にそう思ったんだからしょーがないじゃんか!


「け、ケイさんってどうしてそう、恥ずかしいことがポンポンと言えるんですか! もっ、信じられません! キスより恥ずかしいですよ、今の発言!」

「アイタタ! そう言われても、勿体無いものは勿体無いというか」


「バカー!」強めに振り下ろしてくる拳を右腕で受け止めながら、「いいじゃんかー!」俺的にはキスの方が恥ずかしいんだし、と反論。

でもココロはこっちの行為の方が恥ずかしかったらしい。


「ちゃんと拭いて下さい!」


まだ取れてませんから! ココロの言葉に、べつに舐め取るからいいと言えば、「駄目です!」絶叫されてしまった。


こうして少しの間、俺達は口端についた口紅をどうするかでちょっとした騒動が勃発。
 

馬鹿馬鹿し過ぎる騒動の軍配は俺に挙がり、ココロに何度も何度もそれこそ今までにないくらい馬鹿を頂戴したという。


しかも敗北したココロはちょーっちの間、拗ね顔のヒヨコ唇で俺にそっぽ。


よっぽど恥ずかしかったらしい。


じゃあ今度はココロに勝たせてあげようかなぁっと思い、俺は不機嫌な彼女に不意打ちのキスをし、

「もっかい付いたら」

その時はティッシュで取ってと一笑する。


そういう問題じゃないと反論しつつも、彼女から少し勢いのあるキスを返された。



今日一日で四、五回は交わしたキス。



何度しても慣れないキスを交わした後の彼女の表情は一変して晴れていた。


それはそれは俺の大好きな、彼女の花咲く笑顔だった。


⇒#04