「こころちゃん。可愛いお名前ね。
圭太の彼女だなんて…、それで息子との出逢いは何処で? いつ付き合い始めたの? 最近? もっと前? 実は一週間前? 家は近くなのかしら? 今度遊びに来てね。
制服は圭太とは違うみたいだけど他校生かしら? 圭太とは同級生? それとも先輩後輩?
ああ、こころちゃんは何が好きなのかし「母さん! ココロが戸惑ってるから!」
お得意の弾丸トークを始めるもんだから、ココロの涙が完全に引っ込んだらしい。
何から答えればいいのか分からず、あたふたと視線を泳がせている。
目を腫らしたココロに、母さんは可愛い彼女を泣かせるんじゃないと頭ごなしに叱ってきた。
うっはー、同級生がいるのに叱れちまう俺って超居た堪れなくね?
せめてヨウ達がいない時に叱って欲しいんだけど。
ハズイのなんのって、俺って完全に悪者!
俺の叱られ光景にヨウは笑ってくれるし。
お前、楽しんでるだろ!
でも反論できないのは罪悪が胸を占めているからで。
俺はココロに視線を流す。
泣きじゃくった顔で俺の視線を受け止めるココロは、泣き泣きなき笑い。
また涙ぐみ始めた。
涙腺の蛇口が壊れているらしい。
それでも彼女は自制をきかせて涙を堪えると、
「これうれし涙です」
ケイさん達が目覚めて良かったっ、あの時は本当に心配して、心配して、彼女は声音を震わせて丸めているティッシュを目尻に押し当てる。
スンッと鼻を鳴らすココロに、「ごめん」俺が物静かに詫びると、「元気になって下さいね」涙に濡れた微笑を向けられた。
うん、約束するよ。ココロ。
ちゃんと元気になるって、約束する、するから、もう泣かないでな。
ココロに泣かれるとどうすればいいか分からなくなるから。
彼女と視線がかち合う。自然と笑みを向けてくれるココロに、俺も力なく笑った。泣き笑いより笑顔が好きだと思った瞬間だった。
と。
俺達は感じる視線にハタッと我に返り、
「いやだから。うん、ごめん」
俺は再三再四詫びを、
「い。いえ」
ココロは気恥ずかしそうに相槌を打って俯いてしまう。



