「よ、ヨウさん何をしようと!」

「放せココロっ、俺は、俺は舎兄として舎弟を元に戻す義務がある! こういう場合、ちょっとショックを与えればっ」

「だだだだ駄目です! もっと酷くなったらどうするんですか!」

「治るかもしれねぇだろ! 状況判断ができないどころかっ、ショックのあまりに記憶捏造だなんて…っ、待ってろケイ! 正常に戻してやっから!」

「うわわわわっ、駄目ですってば! 今度こそ記憶がぶっ飛んじゃいますぅうう! こ、ここはひとつ冷静になって病院に連れて行きましょう!」


「ゲッ、よ、ヨウ! なんで殴ろうと…、やっぱり俺は日賀野の舎弟なんだな?! 正直に言ってくれよ!
うわぁああっ、お前と築き上げていた友情が全部夢だったなんてっ! 俺、泣けてきた! 俺とお前は終わりなんだな! 圭太ショック!」

「終わってねぇよ! 俺とお前は今も舎兄弟だよ!」


「うぐっ、じゃあ俺はココロとも終わってっ、そ、そんなっ…カレカノはただの夢か! 圭太大ショックっ、あれは妄想だったのか! てことは俺、妄想癖の持ち主?!」

「ゆ、夢でも妄想でもないですから! 私とケイさんは今もカレカノです!」


「神様は俺がお嫌いなのか?! いや健太と和解したのは良かっただどもっ、こんなのあんまりだぁあああ! ええいっ、もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ! 俺は腹を括った!」


「ッ~~~ココロ! 医者でもこれは治せそうにねぇぞ! ケイが阿呆になっちまったぁああ!」
 
 
大パニックになったのはこの直後。

「ヤンデレ不良怖ぇ! パネェ!」

ケイさんは意味不明な単語ばかり言うし、

「拳骨一発で治ってくれよ!」

ヨウさんは本気でケイさんを殴ろうとするし、

「駄目ですってばぁあ!」

私は私で半狂乱になりながら止めに入るし、その場はてんやわんやになった。


結局、これがケイさんの見た悪夢による勘違いから起きた騒動だということは余談として付け足しておきます。

落ち着きを取り戻したケイさんは、ヨウさんのお叱りを受けた後、もう一眠りすると言ってソファーに寝転んだ。

私は負傷した彼の傍にいることを決め、寝転ぶケイさんを見つめる。


照れくさそうに笑うケイさんは、「もしかして…、ずっと傍にいてくれた?」と目尻を下げてくる。

うんっと頷き、私は頬を赤らめながらケイさんに言う。


「心配ですから。何かあったら傍にいるって言いましたから」

 
私と同じ顔をするケイさんに、笑声を漏らしてしまった。

ヨウさんとケイさんがどういう約束をしているか分からないけれど、何かあったら傍に居る。ううん、何もなくても傍にいる。

それが私達の約束と思ってもいいですよね? ケイさん。

 
⇒#03