どうにか泣き止んで一旦家に帰り、着替えて病院に向かったんだけど…、今度は別の敵が立ち塞いだ。

ハジメさんのご両親だ。

容態を聞こうと訪れた私達よりも先に足を運び、帰るよう言われたんだ。


しかも責められた。


ハジメさんを駄目にした人間がよくもまあ、ノコノコと現れてくれただの。訴えるだの。

これ以上息子を駄目にするなだの。

ぼろくそに言われてしまい、私は呆気取られるしかなかった。


これは待合室での出来事。

看護師さんから注意を受けたんだけど、向こうのご両親はモンスターペアレントみたいで律に則(のっと)って訴えてやると癇癪を起こしていた。

それに恐怖心は出てこなかったんだけど、私はすこぶる困惑してしまった。


だって大人とこんな風に対峙したことなかったんだから。
 

「君と出会わなければ」


息子は駄目にならなかった。

ハジメさんの両親は、特にハジメさんを不良に引き込んだヨウさんを責めて立てていた。

けれども顔色ひとつ変えないヨウさんは、

「だったら俺はアンタ達に感謝するさ」

だってアンタ達があいつを追い詰めたおかげで、俺はハジメと出会えたんだからと喝破。


「どんだけあいつがテメェ等の理想で苦しめられていたか知ってっか? 知らねぇだろ?! ハジメは生きた人形も同然なんざ吐いていたんだからな!」


偽善な親面しやがってッ…。

ハジメに自分達の理想を押し付けて、あいつを散々苦しめていたくせに、テメェ等があいつの何を知ってるんだ!

あいつがどんだけ苦しんでたと思うっ。

あいつの素さえ見なかったテメェ等なんざ、ちっとも怖かねぇよ。訴える?


いいぜ、訴えろよ。受けて立ってやる。


テメェ等がどう言おうと、俺等の繋がりは俺等にしか断ち切ることができねぇ。エリート弁護士様じゃ一生掛かっても無理だ。絶対に。


寧ろ俺はテメェ等のような親を持ったハジメを同情しちまうぜ。

さっさと手前の理想なんざ捨てて、ガキの素を見るようプライドなんざ捨てろよ。ハジメは俺等の仲間。

あいつが俺等を呼べば、俺等は何度でもあいつの前に現れる。大事な仲間だから。
 

「弁護士だかなんだか知らないがな、ハジメの気持ちをこれっぽっちも知らないテメェ等よりかはあいつのことを知っている自信あるぜ。
どーせ怪我の連絡がなきゃ息子を放って仕事に熱中していたんだろ? そういう大人だよ、テメェ等は」