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―――…今でも思い出せる、仲間の悲愴な姿。私達のチームは大切な仲間を一時的に失った。
 
 
あれは冷たい雨が降っていた日のこと。

前触れもなしに私達のチームは日賀野さんのチームが放ったであろう刺客に襲われ、ハジメさんというインテリ不良を失った。

前々からハジメさんは自分の手腕のなさをコンプレックスに持ち、チームに居ていいかどうか悩んでいたらしい。弥生ちゃんから聞いた。


ケイさんも手腕のことではコンプレックスにしているみたいだから、ハジメさんの悩む気持ちを聞いて驚くことはなかった。

チームの男の子って率先して喧嘩をしないといけないって気持ちがあるみたいだから、ハジメさんやケイさんは非力な自分に嫌悪感を抱いていたみたいなんだ。


でもリーダーのヨウさんはそんなこと一抹も気にしてはいなかったと思う。


彼はどんな人でも、彼自身が仲間だと受け入れた人はチームにいて欲しいと切望する人だから。

取り得のない私でさえヨウさんはチームにいて欲しいときっぱり言ってくれた人だった。


だからヨウさんは手腕なんて眼中になかったんだと思う。該当者はそうじゃなかったみたいだけど。


ハジメさんは自分が利用されることを恐れ、自ら相手の意向に逆らった。

すんなり相手の意向に従えば大怪我もしなかっただろうに、ハジメさんは自分のプライドと仲間のためにその身を悪意ある敵に投げた。


その結果、ハジメさんは病院送り。

重度の骨折と打撲をおった。
 

弥生ちゃんは救急車に運ばれるハジメさんに、ううん、大怪我を負ってチームの下に帰ってきた彼に大ショックを受けていた。


始終涙を流し、片時もハジメさんから離れようとはしなかったんだ。


どんなに私が宥めても、救急隊員が来て離れるよう指示されても、弥生ちゃんはハジメさんを抱擁して嗚咽を押し殺していた。

どうにかハジメさんから離し、隊員さんに彼をストレッチャーに乗せてもらったんだけど、糸が切れたように弥生ちゃんは私の体に縋って大声で泣いた。


それはそれは降り注ぐ雨と同じ量、ううん、それ以上の降水量が彼女の目から溢れ出していた。


私も仲間を傷付けられたショックと、弥生ちゃんの悲しみを一心に受けてわんわん泣いた。


泣いているのは私達女子だけで、他の皆は悲痛な顔をして救急車を見送っていたっけ。

もしかしたら隠れて泣いていたかもしれないけれど、それに気付ける余裕は私達にはなかった。