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ケイさんのお勧めで、一軒の和菓子屋さんに足を踏み入れる。

土地勘に長けた彼はわりと近所の店々を知り尽くしているようで、「ここの苺大福美味いんだ」と教えてくれた。

更に彼曰く、生クリームが入った大福も最近売られるようになってOLさんに人気だとか。


ケイさん的には塩まめ大福も美味しいんだって。

まるで女の子のようにスイーツに詳しいケイさんだけど、話を聞く限り、彼のお母さんが詳しいんだそうな。


「いや、塩まめ大福は万人受けの美味さを勝ち誇ると思うんだ。苺大福も美味いけど、塩まめ大福の絶妙な塩梅は堪らないんですよ。
ココロさん。どうです? 此処はひとつ絶妙な塩梅をお二人にお贈りしても宜しいのでは?」
 

じいじとばあばのお土産は是非とも塩まめ大福を、と彼はチョイスしてくれる。


ケイさんのセールストークに笑った私は喜んでそのチョイスを受け入れた。


ケイさんのことはじいじもばあばも好青年の好い彼氏さんだって公認してくれているんだ。

若いのに書道に長けているって点がまた好感を抱いているみたい。


ケイさんって字が上手だもんなぁ。私の丸っこい字より数十倍綺麗だもん。


話は戻って、私はケイさん一押しの塩まめ大福と苺大福。
それから生クリームの入ったクリーム大福に草餅、おはぎを買った。

多めに買ったのは両親のお供え物、だけでなくこれからお邪魔するケイさん宅のお土産。

アポなしでお邪魔するんだからお土産くらい用意したい。

買うまで全然気付かなかったケイさんは、買った物を二つに分けてくれるよう店員さんに頼む私の姿を見てようやく察した。

「別にいいのに!」

慌てる彼に一笑して、「駄目です」これは私の気持ちなんですから、と意見した。


「ケイさんは私にカッコつけたでしょ? じゃあ、私はケイさんのご家族にカッコつけます。お金は受け取りませんからね」

「う゛。先手を打たれたっ…、ほんと良かったのになぁ」


頬を掻くケイさんに目尻を下げ、私は店員さんから買った品物を受け取って彼と店を出る。