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和菓子屋さんは、複合商業施設の外に何軒かあるとケイさんが教えてくれた。


その内の一軒を目指して私とケイさんは大通りを歩いている。

早くじいじ・ばあばと両親のお土産を買ってケイさんの家に行きたい。その一心で歩みを進めた。
 

背丈が違うせいか少し幅の違う歩調、彼の方が歩調的に大きいけれど速度を落として私と肩を並べてくれる。


気遣ってくれているんだって実感すると、欲張りな私は彼に想われてるんだなぁってついつい自惚れてしまう。
 

ケイさんの横顔を脇目に、私は結んだ手のぬくもりに心躍らせていた。
 

白昼堂々人盛りの多い場所で手を結ぶなんて、私達にとってはすっごく勇気のいること。

夜に手を結んだことはあるけれど、真昼間に手を繋ぐのはこれが初めて。


だって手を繋ぐ行為、結構目立ったりするから。


なんか見せ付けているような気分になる。


私が傍観者側に回ればまさに“見せ付けられてるなぁ”って思ったりするんだけど、まさか自分がそっちの立場に回るなんて思いもしなかった。


見せ付けている現実に軽く恥らいながらも、私は絶対に手を解きたいなんて思わなかった。



折角のデートだもの、デートらしいこと…、したいんだ。
 

今までゆっくりとデートも何もできなかったし、私達は他校同士。

同じ恋人の立ち位置にいる弥生ちゃんやハジメさんと違って、会える時間は限られている。いつも我慢している分、傍にいたいし、思い出に残るようなことをしたい。
 


と、私の我が儘はさておいて、さっきから私達の間に会話が飛び交っていない。



何かあるとすぐ沈黙になってしまう私達、まだ恋愛に慣れていないのは言うまでもないよね。だってしょうがない、私にとってケイさんは初カレ。


デートなんて初めてだし、異性とどうコミュニケーションをとればいいのかチンプンカンプン。


手を繋いでから、何を喋ろうかと考えはするんだけど、考えるだけで話題が出てこない。何を喋ろう。