「注意事項は三つ、何が何でも肩を掴んでおけ。しがみ付いておけ。優しい運転は一切できない。以上!」
警告と同時にケイさんはペダルを踏んで自転車を飛ばした。
病み上がりだと思うのに本当に荒々しい運転で、立ち上がった不良達が全速力で追って来るのを確認した直後、急な方向転換で路地裏に逃げ込むそのハンドル捌きには感服。
ガタガタと揺れる自転車をもろともせず、素早くハンドルを切る。
「わっ!」前のりになる私に、
「しがみ付いていいから!」落ちることだけは絶対にしないでくれ、懇願される始末。
こくりこくりと首を縦に振る私は、必死にぺダルを漕いでいるケイさんの肩を握り締めた。
いつもは大人しそうに、でもヨウさん達とワイワイがやがやしているのに、ケイさん、こんなにも荒々しく自転車を漕いでるんだ。
喧嘩の時はいつもこんな感じなのかな?
いつもヨウさんを後ろに乗せて、不良さん達との喧嘩を切り抜けているのかな。
だったらほんとに凄いな。強いな。逞しいな。
―…嗚呼、不本意だけど、こんな時に何を思ってるんだって自分に叱咤したくなるけれど。
「ココロ、もうちょい我慢なっ」
ケイさんに守られている、その現実に泣きたくなった。
どうしてケイさん、助けて欲しいと思う時に助けれてくれるんだろう。
カッコつけさんっていうのは知っているけど、こうやってヒーローのように助けてくれたら、ケイさんのことカッコつけさんじゃなくて、本当にカッコイイ人。
カッコイイ男の子だと思ってしまう。
ケイさんはズルイ人だ。
本当にズルイっ、こんな風に守ってくれた私、もっとケイさんのこと好きになる。なってしまう。
意外と大きくて頼り甲斐のある背中にしがみ付いて、私は込み上げてくる感情を必死に抑えた。
恐怖心からの感情は勿論あるけれど、あるんだけれど、それ以上に私は…。



