「なんだよ。なんかあったのか?」
空気を察したヨウさんが、再度質問。
慌てて私達は「なんでもないって!」「なんでもないです!」誤魔化し笑い。
「なにかあったって言われればあるようなないような。でもないんだよな、ココロ」
「は、はい。結論から言いますとないですよね。ケイさん」
「は…ははっ、参ったよな」
「え、ええ…ほんとに…参りましたね」
笑いも、視線がかち合えば溜息に変わる。
なんで、どうして、こうなってしまうんでしょう。私達。
取り敢えず皆さんに飲み物やお菓子、ルーズリーフを配布して、追試組に勉強を教えるという流れになったのだけれど、私とケイさんはちっとも参加できなかった。
寧ろ、お互いに避け合っているものだから、ほんっと不良の皆さんにご迷惑を掛けてしまう始末。
見かねた響子さんがこっそりと私に「喧嘩でもしたのか?」、心配を寄せてきてくれる。
「いいえ」喧嘩なんてしてませんよ、愛想笑いで返すけれど内心は溜息ばかり。
ただ喧嘩をしたならまだマシだったと思う。
本当に喧嘩だけなら、まだ。
私はそっと彼に視線を流す。
倉庫の窓一角でキヨタさんと会話しているケイさんは、困ったような顔を浮かべて笑っていた。
始終困り顔。
嗚呼、やっぱりケイさんにとって魚住さんの誤解は不都合極まりないんだ。だってケイさんは弥生ちゃんが…、困った顔、させるつもりなかったのになぁ。
改めて自分がケイさんにとってどういう立ち位置なのか思い知らされる。別に期待していたわけじゃないけれど、でも、現実として形付くと結構傷付く。
(ケイさん、嫌だったろうな)
気の無い女と男女の営み疑惑を掛けられたなんて。間接的に傷付けたんじゃ…、そう思うと胸が重石のように重たくなる。
弥生ちゃんとだったら、ちょっとは違ったのかな。ケイさんの反応。
響子さんが心配してくれる中、やっぱり私は溜息しか出なかった。



