「ちょっとちょっと弥生さん。ポクが食べるものを、横取りするつもり?」

「いいじゃない、ケチな男はモテないよ。ケイ」

「ケチであろうとケチでなかろうと、俺はモテたことないんですけどー? どーせ俺にはモテの“モ”もないよ。ってことで、だっめー」

「ひっどー! じゃあいいもん。ハジメ、私にチョコケーキね! ハジメはケチじゃないから私に半分恵んでくれるよね?」
 

誰彼隔たりなく、しかも場を盛り上げる弥生ちゃんの空気に私は何故か息苦しさを覚えた。

なんだろう…、弥生ちゃんは皆を楽しませるために場を盛り上げよう盛り上げようとしているだけなのだけれど、それが妙に息苦しい。


―…あ、そっか。皆を和ませて笑わせているから、すっごく苦しい気分になるんだ。
 

だってこういうタイプって好かれやすいし、私にはない持ち前の明るさとノリがあるから…、隣を見やればクスクスと笑ってるケイさんの姿。


弥生ちゃんの悪ノリに便乗して会話に加担している。



ケイさんって明るくてお喋りな子、好きそう。


弥生ちゃんとかモロそのタイプだから…、私、弥生ちゃんに羨望を通り越して妬ましさを抱いているのかも。

分かってる、弥生ちゃんにその気なんてないってことは。


でも、ケイさんは…、結構その気だったりして。


嗚呼もう醜い、僻む自分!
 

軽く溜息をついて、私はダンマリとその場の空気に居座った。


話題を振られたら愛想笑いで話を流しはするけれど、弥生ちゃんのように場を盛り上げるようなことはできず。モヤモヤっとした気持ちだけが募った。

折角アドレスを交換することに成功したのに、些細な事で気分を霧散させちゃった。

喜色が消えちゃった。


私って結構我が儘なのかも。


楽しい時間の中に苦い苦い気持ちを味わう羽目になって、私は心中で何度も溜息。



結局アドレスのこと以外は個別に話が出来ず、ケイさんにお弁当の話題…、振れなった。
 


⇒#02