幕末怪異聞録



「時雨!無理するな!」


ボフンッ!


狼牙は犬から元の姿に戻り、灰鐘を包み込むように横になった。


その灰鐘の髪は黒くなり、苦痛に歪む両目も黒くなっていた。


「狼牙……。
恐らく西沢がこの近くで私を探し、“これ”に強い念を送っているんだ。
だから、こんなに痣が痛むんだ……。」


額に脂汗を滲ませ、肩で息をする灰鐘に狼牙は大変なことに気が付いた。


「時雨、痣が頬まで広がってる……!」


「やはりそうか……。
封印から少し漏れている気がしていたんだ。」


そう言って、灰鐘は「はぁ……」と長いため息を吐きながら、左手で顔を覆った。


そんなとき、乱暴に障子が開いた。


「時雨!生きているか!?」


「なんだ、土方か……。
生きているさ。」


灰鐘の黒の髪と瞳にも驚いたのだが、弱り果てた姿にも驚いた。