幕末怪異聞録



『――つぅ……!』


刀を振るったのは時雨で、それが西沢の頬をかすった。


「あまりなめるなよ?」


相変わらず睨み続ける時雨に西沢は大笑いをした。


『俺の顔に傷を付けたやつは初めてだ。
気に入った。』


ニヤリと笑うと一瞬、姿を見逃した。だが、それはすぐに見つけることができた。


「いたっ……!」


右の首筋が切れた痛みがしたと思えば、後ろから声が降ってきた。


『今浚うのは止めておこう。
お前の妖力が俺より高いのが気にくわん。』


「――!?」


突然ガクンと力が抜け、地に膝を着いた。

垂れる髪は黒く、瞳は黒を宿していた。


『首の傷は俺様の呪いだ。
それは妖力を抑え込む。
まぁ、その呪いに喰われんように気を付けることだな。』


そう言って忽然と姿を消した。


その首の傷はすぐに癒えたが小さな痣ができており、後に時雨を苦しめることとなる。