幕末怪異聞録



『時雨…。

あれは夢なん?』


「…。」


灰鐘は声をかけられるまで梅がそこにいることに気付けなかった。


それ程取り乱していたのか…。


「お梅、あんた私の夢を覗いたのか?」


チラリと目をやると、その顔は些か曇っていた。


『覗いたんやない。勝手に“見えた”んや。』


(恐らく“あいつ”の念が強くてお梅にもいったんだな…。)


「お梅が気にする事じゃないさ。
あんたは成仏する事を考えとけばいいの。」


『でも…。』


小さい子を諭すような言い方の灰鐘に、梅はまだ言いたいことがあるようで、口を閉じようとしなかった。


『多分、来はるよ…。
そこまで来てはるんちゃうの?』


(そこまで分かってるのか。)


そこまで聞いていた狼牙が黙っていなかった。


「もしかして、西沢か?」