幕末怪異聞録



――カチン…。



太刀を鞘に戻すと、灰鐘は冷たい隻眼を隠すように笑みを浮かべた。



「平助も、お疲れ様。」


その様子に些か驚いたが、藤堂はあきれた声をあげた。


「時雨さん、いきなり斬りかかるなよ。
吃驚するだろ?」


「あぁ。すまなかった。
じゃあ、お前は早く寝な?」


手を伸ばし、藤堂の頭を撫でる灰鐘。


撫でられる当の本人は居心地悪いのかそっぽを向いて丁寧に灰鐘の手を払った。


「みんなして俺を子供扱いしやがって…。」


ぼそりと呟く藤堂に灰鐘はクスリと笑った。


「そうだな。魂は漢(オトコ)だものな。
だが、お前は巡察で疲れている上、先程まで鬼に憑かれていたんだ。
夜更かしせずに早く寝た方がいい。」


「時雨さんは?」


「私か?
そうだな。私も寝ようか。」


そう言って、藤堂と灰鐘は八木邸に戻り、床に着いた。