幕末怪異聞録



「成り行きだ。」



「はぁ?」



バレないようにわざと男装しているのかと思えば……



「なんだよ“成り行き”って…。」



「江戸を出た時はちゃんと女の着物を着ていたが、ここに来る前老夫婦の家に世話になってな。
着物をくれたんだが、何故か男物で、どうやら髪を一つに結い上げていたからか男と間違えたんだ。

不本意ではあったが、くれたものだから有り難く使わせてもらったのだ。」



(どんな老夫婦なんだよ)


と皆が思ったのは言うまでもない。



「ところで、この犬は何なの?」


沖田が手に持っていたのは狼牙だった。


「狼牙!
お前いないと思えば…
遊んでもらってたのか。」


「違うわ!!
表を歩いてたらコイツに捕まって食われそうになったんだよ!」


「…。」


キャンキャン叫ぶ狼牙に灰鐘は遠い目をした。


自力で脱出した狼牙は灰鐘のそばに駆け寄った。