幕末怪異聞録




「――ところで原田はどうした?」



番を頼んでいた筈の人物がいないことに土方は眉を寄せた。


「彼奴なら私が出てくるまでちゃんと廊下にいたさ。
ここに来る途中に帰してやった。
何か不都合でもあるのか?」


灰鐘は半刻も待たせてしまった上に、部屋まで付いて来てもらうのは忍びないと思い、原田を帰したのだった。


当たり前のように言う灰鐘に土方はため息をついた。


「お前は客であって客じゃねぇ。長州の回し者の可能性だってあるんだ。
悪さしねぇように原田をつかせてたってのに……」



「意味がねぇ」と言わんばかりに再びため息をついた。


土方の真意を理解していた灰鐘は小首を傾げた。


「私の監視は一人で十分ではないのか?」


「…。」


「いるんだろ?

そこに。」



そう言って灰鐘は天井を見上げた。