幕末怪異聞録



「私と一緒じゃ嫌か?」


時雨は眉を下げて笑った。それを見た沖田は大きく首を振った。


「じゃあ私も付いていく。私は総司の面倒を見るように言われているんだ。だから……」


そこまで言った時雨は原田から沖田の脇差しを取ると、それを土方に突き付けた。


「これは総司も信頼してる土方に託そう。」


真っ直ぐ土方を見た時雨。

土方は薄っすら笑みを浮かべそれを受け取った。


「総司。向こうには松本先生がいる。皆に迷惑をかけず大人しくしてるんだぞ。」


すぐに顔を引き締めて小言を言う土方に沖田はクスリと笑った。


「はい、分かりました。」


「では、行くか。」


草鞋を履いた時雨が立ち上がった。そして原田に向かい合い「有り難うな。」と言って笑った。


原田はそんな時雨の頭を撫でた。


「気を付けて行けよ。」


「あぁ。……左之も気を付けろよ。」


そう言って二人は屯所を出た。


「……。」


(嫌な予感がする…。)


「――この予感当たらないでくれよ…。」


振り返り屯所を見た時雨は不安な顔をした。


得体も知れない不安に時雨は包まれていた。


もうすぐそこに大きな大きな波が迫っていることにまだ誰も気付いていない―――………