幕末怪異聞録




「で。」


「で?」


ジロリと時雨を見た土方に当の本人は小首を傾げ「何だ。」と言った。


「その刀久しく見ていなかったなと思ってな。」


「これか?私はずっと持ち歩いていたぞ?」


「そうではなくて、何故それを持ってそこにいるのかということだ。」


話のわからん奴だと言わんばかりに土方はため息をついた。


「何故だと思う?」


そう言うと時雨はスッと刀を抜き土方に向け近付いた。


「……。」


「……土方。動くなよ?」


さらに近付き、時雨は刀を振りかぶった。


ザシュッ!!


袈裟懸けに斬り落とした相手は土方に取り憑いていたあやかしだった。


チンッ……


「俺だけか?」


「んー……。居なくなったみたいだ。」


時雨は難しい顔をして首をかしげた。


「――呼ばれた気がしたんだが……。」


「どうした?」


「いや、なんでもない。用も済んだから部屋に戻るよ。」


ニコッと土方に笑顔を向けた時雨はその場を去った。


土方は時雨がその場からいなくなるとゆっくりと空を見上げた。


(久しぶりに空を見上げた気がする……。)


時雨がしたように大きく息を吸い、吐いた。


「――さ、残りの仕事するか…。」


そうポツリと呟くと土方もその場を去った。


そんな二人の様子を影で見ていた山崎は頭をかいた。


「難儀な人らや……。」


そう呟いてフッと笑った。