幕末怪異聞録




「すまねぇ……。」


そうポツリと呟いた土方は時雨と一緒に書類を拾った。


それを聞いた時雨はゆるゆると首を振った。



「私も言い過ぎた。あんたが一番分かってるのに…。」


ギュッと持っていた書類を握り、「ごめんなさい…。」と頭を下げた。


それを見た土方は困ったように頭をかき、時雨の頭をポンポンと撫でた。


「お前が謝るな。核心を突かれて俺も言い過ぎた。」


そこでやっと顔を上げた時雨はあることに気が付いた。


「土方、あんたちゃんと寝てるのか?薄っすらクマができてるぞ?」


「あ?あぁ……。少しは寝てるから大丈夫だ。心配するな。総司もお前も安全な場所を手配するからもう少し待ってくれ。」


そう言って土方は笑ってみせるが顔に元気がないのが分かった。

しかし、心配するなと言われた以上あまりしつこく言う訳にもいかなかった。


「早くしろと言いに来たが、別にそこまで急がなくてもかまわん。邪魔をしてすまなかった。」


少し罰が悪そうな表情を浮かべて時雨はそそくさと出て行った。
もちろん出て行く間際に「ちゃんと寝ろよ!」と一言置いて。


そんな少し不器用な時雨の優しさに土方は笑みを浮かべた。


「敵わねえな、あいつには。」


途中だった仕事にまた目を通し始めた。