ーーーー慶応三年十二月





時代の大波はすぐそこまで来ていた……





「ーーはい、土方からの返事。」


「……。」


場所は天満屋の一室。


無表情で文を受け取るのは三番組組長斎藤一である。


斎藤は文に目を通したら火にかざし、燃やした。


「あんたも大変だろう。総司の世話もしているのに、更にこのような文の受け渡しまで。」


「いや、別に私は大変と思ってない。と、言うか私の方が大変そうに見えるんだが?」


おもむろに口を開いた斎藤に時雨はニッコリと笑みを見せた。


その笑みを見た斎藤はすぐに顔を背けた。


先日油小路であった事件の新選組からみると“敵”側に当たる御陵衛士に入っていた斎藤。


しかし、今では新選組に戻っている。


これは斎藤が寝返った訳でもなく、優柔不断という訳でもなく、御陵衛士に間者として潜入していたのだった。


その御陵衛士も今では解散し、任務完了という形で戻ってきたのだが、何も知らぬ隊士からは白い目で見られ、言わずもがな経緯を分かってしまった隊士からは非難の目を向けられていた。


そんな折に舞い込んできた三浦休太郎の護衛の話だった。