幕末怪異聞録




藤堂は少し目線を下げたが、すぐに永倉に戻した。


「————できねぇよ……。」


「——!!」


分かっていたと言わんばかりに永倉はフッと笑った。


(こんな場面で逃げ出すわきゃねぇよな……。)


「そりゃそうだよな……。」


「たりめぇだ!魁先生が真っ先に逃げれっかよ!」


「だが、俺と左之はおめぇを逃がしてやれって言われてるからなぁ。」


それを聞いた藤堂は驚いた顔を見せた。


それが土方によるものだと瞬時に理解できたからだった。


だが、その話に乗っておめおめと逃げる藤堂でもなかった。


「——悪りぃけど、やっぱその話乗れねぇよ。」


黙っていた原田が藤堂の元へ行き、胸ぐらを掴んだ。


「何でだよ!俺はお前を助けてぇんだよ!」


「左之さん……。」


パシッ……!


カチャリ……。


「——へ、平助……。」


藤堂は原田の手を払いのけ、刀を向けた。


「試衛館の頃からすげぇ世話になったけど、やっぱ俺が信じた道だから、最後まで歩き抜きてぇんだよ!」


その瞳に映るのは、紛れもない“覚悟”だった。