幕末怪異聞録



「似合ってるね、その髪紐。」


勘付いた様子もなく、ジッと時雨の髪紐を見つめる沖田。


「そうか?ありがとう。」


(髪紐を取られたのが総司に出会う前でよかったよ……。)


内心ホッとする時雨。


そんななんて事ない食事の時だが、やはり時雨の胸はざわついていた。


(まぁ、考えても仕方ないか……。)


時雨はまた食事を再開したのだった。






それから二刻程経った頃、沖田は寝床に入り、時雨は縫い物をしていた。


「……。」


時雨の胸のざわつきは収まらず、むしろそれに苛ついていた。


(全く、今夜は何なのだ?一昨日あの血生臭い現場に遭遇したから未だ気が立っているのか……?)


縫い物を床に置き、立ち上がった時雨は茶でも飲もうと厨に向かった。


厨でゴソゴソ準備をしていると、急に全身の毛が逆立つかのような感覚に陥った。


「————!?」


キョロキョロと見回し、勝手口から外へ出た。


この感覚を時雨は今までに何度も感じた事があったのだ。


ただ、久々過ぎて一瞬戸惑ってしまった。



「——これがただの勘違いであって欲しいな……。」



それは、“知人が殺される予感”だった。