頭を下げる男をじーっと見つめて時雨はニコリと笑った。
「すまないが、昔に会ったことがあるのか?」
「———!!」
慌てて顔を上げ、山崎は呆れた表情をした。
そんな山崎を尻目にのんびりと話した。
「悪気があるわけではないぞ?元来私は人の顔を覚えるのが苦手でな。時々怒られるんだよ。」
山崎も些か苛ついていたのか、眉間に皺を寄せていた。
「お前さん阿保やな。人の顔も覚えることができん鳥頭なんやな~。」
「はぁ!?ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!あんたみたいな顔の薄い奴は特徴なくて記憶に残らねぇよ!」
「そうかいな。この俺の気配でも気付けへんのか?」
「ん?気配……?
あぁ!
初めて屯所に入った時やたら監視していた奴か!それでも顔は思い出せない!」
「あの頃は敏感やったのに、あんた完全に腑抜けたな~。」
「なっ……!さっきから黙って聞いてたら———」
「何やってんの二人とも。山崎君も来たなら早く上がれば?」
言い合っていたら痺れを切らした沖田が呼びに来た。
「はい、お邪魔します~。」
山崎も時雨を無視して中へ入ってしまった。
一人玄関に立ち尽くす時雨は何とも言えない敗北感に包まれていた。
(——いつかあいつをぶっ飛ばす!)
額に血管を浮かばせながら、拳をギリギリと握りしめた。



