「姉上?」
どういうことなのか小首を傾げる時雨。
沖田は座り「いただきます。」と言って味噌汁を啜ると、少し照れた顔を時雨に向けた。
「僕には姉の“みつ”がいるんだ。僕が四つの時に父が、その後すぐに母が亡くなってしまったんだけど、姉上は母上の様に僕に接してくれて、僕の母親代わりになってくれたんだ。時雨が江戸の女の人って、いうのもあるけど、そうやって家事をしている姿を見ていたら姉上を思い出したんだ。」
照れ笑いを見せる沖田に時雨はニッコリと微笑んだ。
「お姉さんに会いたいか?」
「うーん……。そうだね。姉上も心配してるから顔は見せてあげたいかな。」
笑みを浮かべる沖田だったが、一瞬不安に瞳が揺れたのを時雨は見逃さなかった。
やはり、病に侵された身はいつ時間切れになるか分からない故、不安なのだろう。
「そう不安に思いなさんな。あんたは大丈夫だよ。」
あえて目を合わせず、ご飯に箸を付けながら言う時雨。
はっきりとした口調で迷いのない口振りだったが、内心後悔していた。
ただの気休めに過ぎなかった上、大丈夫など気軽に言っていいものか時雨自身分からなかった。
だから、言った後も沖田の顔を見ることはできなかった。
それでも沖田は「そうだね、ありがとう。」と言った。
沖田の方を見れない時雨は、沖田がどんな顔をしているのか分からなかった。
だが、それでも声は明るかったから、少し胸を撫で下ろしたのだった。



