幕末怪異聞録




時雨、土方、沖田は屯所を出て、ある家に入った。



「———えっと、土方。此処は何処だ?」


そう言って時雨は荷物を下ろした。


見たところ割りと綺麗な一軒家で、誰か住んでいる形跡がある。

そんなところにズカズカと入っていいものかと少し戸惑ってしまった。


土方は、そんな時雨を知ってか知らずか、あっけらかんと口を開いた。


「此処は近藤さんの元妾宅だ。」


「しょ、妾宅!?」



新選組の隊士は、屯所から十里(約40km)以内に妻子を住まわせる事ができなかった。


無論、命を惜しむような事になっては困るからだ。

しかし、幹部になるとそれ以内でも妻子、妾を住まわすことができたのだ。



時雨は余りの事に固まってしまったが、すぐに我に返り、土方に詰め寄った。


「お前は馬鹿なのか?それとも働き過ぎで頭がおかしくなったのか?
何故私が近藤さんの妾と一緒に住まにゃならんのだ!!」


「ちょっと落ち着け。目が血走ってるぞ?」


「誰のせいだ!!」


時雨は何処で寝ても良いと思っていたが、流石に妾と共に暮らすなど、馬鹿にされているとしか思えなかった。


だが、その怒りも無駄となってしまう。


沖田の言葉で。




「此処、僕が住んでるんだよ。」



「——は……?」