幕末怪異聞録



少し惚けてしまった土方だが、んんっと咳払いをした。


「お前これからどうするつもりだ?」


「ん?どうって……?」


時雨はムッとした表情から一変し、小首を傾げた。


「だから、どっか宿でもとっているのか?」


「あー……。」


一番聞かれたくない質問だった。


少し罰が悪そうな顔をする時雨に、土方は顔を引きつらせた。


「まさかお前行くとこねぇのか?」


「うんっ!」


満面の笑みで頷く時雨。


「まぁ、こんなに立派になったんだ。部屋の一つや二つ空いてるだろう?」


いけしゃあしゃあと言う時雨に土方はこめかみを押さえた。


「——あのな……。屯所は宿じゃねぇんだよ…。てめぇにくれてやる部屋なんぞない!!」


「えー!?」


「えー!?じゃねぇ!」


黙っていた沖田が、土方をなだめるように口を開いた。


「まぁまぁ、土方さん。そんなに怒らなくても……。」


「総司!お前は引っ込んでろ。」


「だけど、色々教えてくれた時雨をこのまま追い出すのはちょっと……。それに僕、昔助けられた覚えがありますし…。」


「……。」


確かにこのまま京の街に放り出すのも危険だと思った土方は、何か思い付いたのか、ニヤリと笑った。


「おい、時雨。一つだけ、お前にくれてやれる場所がある。」


その笑みはドス黒い笑みだった。