幕末怪異聞録



重くなった空気を払拭するように時雨は笑顔を見せた。


「まぁ、あんたが何を思っているのか、胸の内は何となく分かっている。」


「——!?」


「山南さんがあえて私に見せたからな。あんたが平助を——」

「うるせぇ。」


はぁ…。とため息をついた土方は、頭をかいた。


「それ以上言うんじゃねぇ。」


「はいはい。」


くくくっと笑う時雨を尻目に、土方は些か罰の悪そうに咳払いをした。


「で?それを俺に言ってどうするつもりだ?」


核心をついてきた土方に、時雨はポカンとした顔をした。


「どうするって、ただ見に来ただけさ。」


「はぁ?」


「私は新選組の行く末を見守ることにしたんだよ。時代に翻弄されるあんたらが、最期はどうなるのか、見てみたくなってな。」


「何だよそれ。おめぇ、幕府に追われてるとか言ってなかったか?」


「もう追われちゃいねぇよ。女一人追いかけ回すほど今は暇じゃねぇだろ?」


「——確かになぁ。」


時代の波は荒れ狂い、先が見えぬ状況。




そんな波に翻弄される新選組の先を照らしてやりたいとも、少なからず思っているのだ。