幕末怪異聞録



土方は些か面倒臭そうに「何でだよ。」そう言った。


「山南さんが誰よりも新選組の事を思っているのは私も知っている。何があったか知らんが山南さんはそんな新選組を脱走。腹を斬った。しかし、無念が残り、私に新選組の危機を知らせたんだ。」


「——なるほどな……。その、危機とやらは一体なんだ。」


先程とは打って変わり、土方は興味深々な瞳を向けた。


「それは……」


「それは?」


時雨は一つ大きく息を吐き、グッと土方に顔を近づけた。




「幹部隊士の……。藤堂平助の死と沖田総司の労咳。そして、近い将来戦が起こり、多くの人間が死ぬ。」


「なっ……!!」


驚いた顔を見せ、少し後退った。


そんな様子の土方を見た時雨は満足そうに笑った。


「どうだ?なかなかだろう?」


「馬鹿かてめぇは!」


馬鹿と言われた時雨はプーッと頬を膨らました。


「——で?どうするの?私の話なんてたかが夢だから無視するのか?」


その言葉に土方は少し考え込み、時雨を見据えた。


「おめぇの話は信じるさ。総司のことは誠だからな……。それに、いつ戦が起こってもおかしくないからな。だが、平助はもう新選組の隊士じゃねぇ。」


「そうか……。」


些か辛そうに聞こえたその声に時雨は頷くしかできなかった。