幕末怪異聞録




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「——いや~、本当にデカくなったもんだな。副長室がデカくなってる。」


キョロキョロと部屋を見渡す時雨。


「キョロキョロしてねぇでそこに座れ。」


「はいはい。」


そう言って時雨が座ったのを確認した土方は、改めて「何故ここへ来た。」と聞いた。


時雨はキュッと表情を締めた。


「その前に聞きたい事がある。」


「——何だ……。」


「山南さんはどうした?」


「———!?何で山南さんの名が出てくんだよ。」


思わぬ名が出てきたものだから、土方は些か驚いた顔をした。


だが、時雨は眼光鋭く「いいから。」と返答を促した。


「——山南さんなら切腹した。新選組から脱走したんだ。それは切腹だ。」



ふぅと目を閉じて一つ大きく息をはいた土方は、「それがどうした。」と続けた。


些か殺気立つ土方を見て、時雨は「ふむ…。なるほど。」と何かに納得した様子を見せた。


「すまなかったな。先日嫌な夢を見てな、それが酷く現実味を帯びていたんだよ。それを見せていたのは、どうやら山南さんだったのかもしれないな。」


「何で山南さんなんだよ。他の奴かもしれねぇし……。」

「それはあり得んな。」


そう言い切った時雨は土方を見据えた。