幕末怪異聞録



「——総司!屯所前でそんな事すんな!隊が締まらなくなるだろうが!」


「あ、土方!久しぶり~!」


些か不機嫌な声をしてやって来たのは土方だった。


その不機嫌な理由とは、


「おめぇがわざわざ出向いたってことは、何か嫌~なことでもあんだろ?そもそも、お前が来たらろくでもねぇ事しか起きねぇんだよ。」


これだった。


なかなか察しのいい土方に時雨は、嫌なくらい満面の笑みを向けた。


「よく分かってんじゃねぇか。今回はなかなかすごい内容だ。喜べ。」


「喜べるか!!それより、総司!お前、もう離れてやれ!完全に存在無視されてるぞ!」


相変わらずベッタリ抱き付いている沖田は、しぶしぶながら時雨から離れた。


時雨はそんな沖田の頭をそっと撫でた。


「早く中に入りなさい。病が悪化するよ?」


子どもを諭すように優しく言った時雨。


「そうだね。」と言った沖田は、大人しく中へ入って行った。


二人きりになった時雨と土方だが、土方の眉間には皺がよっていた。


「そんなに皺を寄せていたら男前が台無しだぞ?」


「おい、何故総司の病の事知っている?」


「————その様子じゃあ表立って言ってないんだな。とりあえず、中に入れろ。話はそれからだ。」


「あぁ。」


こうして二人も中に入ったのだった。