幕末怪異聞録



門の前でニヤニヤしていてもただの変態だから、時雨は門の近くにいた隊士に声をかけた。


「すまないが、土方に“時雨が来た”と、伝えてくれないか?」


「——はぁ……。分かりました。」


そう言って、建物の中に入って行った。


が、すぐに誰かがやって来た。


(——来るの早くねぇか?しかも、あいつは……。)


考えるよりも相手の方が早かった。


「———時雨ー!!」


ガバッ!!


大きな声を上げて、時雨に抱き付いたのは他でもない……


「…………総司……。」


為すがままに抱き付かれてやっている時雨は、何故沖田に抱擁されているのか考えた。


(そんなに総司と会っていなかったか?)


うーんと首を傾げ、何かに気づいたようにハッとした。


(そう言えば会っていなかったな……。先日馬鹿二人に会ったからそんな気がしなかっただけか……。)


そして、時雨は沖田の背中をポンポンと撫でるように叩いた。


「———久しぶりだな、総司。」


「——うん、久しぶり!時雨!」


「……離してくれないか?」


「———い、や、だ♪」


「……。」


それ程に時雨との再開が嬉しかったのか、顔を緩め、駄々をこねる沖田。


まるで子どもみたいだ。