——————————………………



「——今日出るつもりじゃなかったのにな……。」


ポツリと呟いた時雨は困ったように頬をかいた。


「ま、いつ出ようが変わらんか。」


時雨が決意をして京に残り新選組を見守ることを決めたのは、狼牙が思った通り再び未来が視えたからだった。


“視えた”というより、予知夢であった。


最初に視えた新選組の未来はうたた寝をしている時に視えたのだ。

だから理解するに時間がかかった。


勿論、時雨は今まで予知夢など視たことがなかった。


時雨が見えるのは、妖を通して過去が視えることであった。


(——今回未来が視えたということは、“何か”が私に新選組を助けてくれと訴えているのかもしれないな。)


そして、二回目に視えた未来は何とも抽象的であった。

しかし、そこには多くの血が流れていたのだった。


恐らく近いうちに戦が始まるのだろうと踏んで、狼牙を江戸へ帰したのだ。

そこまでを狼牙が気づいた事に時雨は少し嬉しくなったのだ。


(あいつはまだ死んではいけないからな。)


「とりあえず、新選組の屯所に来てみたが……。知らぬ間に立派になったものだな。」


予知夢の元凶である新選組の屯所へ来た時雨。


その門はどっしりしていた。


(——前は人の家に泊まり込んでいたのにな。)


こちらも成長していると思うとまた笑みが零れた。