幕末怪異聞録




外で待機する二人に医者を呼ぶよう伝えた時雨は、再び部屋に戻った。


そして、横たわる二人をジッと見つめた。


(ーーありゃ、もう息がないな……。)


うつ伏せになり大量に出血している様を見て、時雨は眉間に皺を寄せた。


しかし、もう片方は微かだが、まだ息があった。


「ーーおい、生きているか?」


その不躾な問いに、「辛うじて……。」と応えた。


彼の横にしゃがんだ時雨はため息をついた。


「お前、名を名乗ってみろ。」


「ーー中岡……慎太郎……だ。」


「そうかそうか。」


意味不明な質問をする時雨に些か戸惑った。


しかし、時雨は何処か満足そうな表情を浮かべ、立ち上がった。


そしてうつ伏せになるそれを足で仰向けにした。


「ふーん……。」


目の前で起こっている事についていけず、呆気に取られていたが、時雨は少し笑みを浮かべていた。


「悪いな、中岡慎太郎。お前、もう話せそうにないから違う奴に聞くな?」


そう言って踵を返した時雨。

入り口で少し振り返り、口を開いた。


「ま、これがお前の仕事だったんだろう?良くやったよ。」


些か意味深な言葉を残して去って行った。