中は薄暗く、些か騒々しかった。
少し奥に進むと横たわる大男があった。
見ると相撲取りを思わす程の巨漢であったが、横たわる下には血の海が出来ており、既に息はなかった。
(ーーこいつのにおいか……?)
しかし、他のにおいも混じっており、他にも斬られた奴がいるとふんだ時雨は二階へと進んだ。
二階へと進むにつれ、その声は大きくなっていた。
「ーーー誰か!!誰か来ておくれやす!坂本はんと中岡はんが斬られとるんです!!誰かおまへんの!?」
「ーー!?」
近江屋の亭主であろうか、騒いでいたのはどうやら彼だったようだ。
時雨は慌てて声のする部屋に駆け込んだ。
「龍馬と中岡が斬られたのか!?」
「ーー!?あ、あんさんはどなたどすーー」
「そいつらの知人だ。あんた、土佐藩邸の場所知ってるか?」
「は、はい……。」
「そんじゃひとっ走りして事を知らせて来てくれ。私は医者を呼んで来る。」
「分かりました!」
突如現れた時雨に戸惑いつつも男は部屋を脱兎の如く飛び出して行ったのだ。
出て行ったのを確認した時雨は横たわる二人を見下ろした。
「……。」
時雨もまた、部屋を出て行ったのだった。



