嫌な汗が頬を伝った。
致命傷を負った程の強い血のにおいがしていた。
「ーー行くぞ!」
誰であれ、斬られたのは誠である。
時雨らは急いでにおいのする方へ走った。
辿った先は近く、においの根源の店の名は“近江屋”だった。
流石のコンもそれが意図することを理解したのか、不安気な表情をした。
『し、時雨……。まさか……だよな?』
「……。」
時雨はコンの顔を見る事なく、頭を撫でた。
「狼牙、コンと共にこの場に残れ。此処から先は私一人で行く。」
「ーーそうだな……。気を付けて……。」
コンを血生臭い現場に連れて行く事などできるはずもなく、ましてや一人で残す事もできなかった。
その思いを理解した狼牙は些か不満ではあったが、時雨を見送ったのだった。
「ーーじゃ、コンを頼んだ。」
宿を出る際に腰に提げた刀に右手をかけ、店の中へ踏み入ったのだった。



